【彦根物語9】
「伝統木造建築と私」
-彦根とその周辺での文化財修理、社寺建築工事に携わって-
西澤 政男
(NPO法人彦根景観フォーラム会員、
日本伝統建築技術保存会会長
㈱西澤工務店代表取締役、
(社)滋賀県建築士会幹事)
彦根周辺には、文化財建造物や多くの素晴らしい古建築が現存していますが、これらを良好な状態で次世代に引き継ぐことは、祖先からの文化を子孫へ継承する為に大変重要なことであります。それらの修復工事のいくつかに参画できた事は、彦根の大工の家に生まれ、伝統建築を志す私にとっては大変幸運なことで、正に本望でありました。その時の写真等をご覧頂き、工事中の建物の表情や、日頃見えない部分等から古人の知恵や苦労・情熱等を少しでも理解し、改めて古建築に対する愛着の念を増幅頂けたら幸いです。
また、このような機会を多くの方々と共有することに依り、今、正に消えようとしている伝統建築技術の保存・継承を支援する輪が拡がって行くことを願って居ります。
【彦根とその周辺での仕事】
■修理前■
【市指定文化財 大津地裁彦根支部 長屋門・高麗門 解体修理工事】
■修理後■
■修理の過程■
1.素屋根建設
2.解体調査
垂木・野地板まで煮炊きのススで真っ黒
(明治以降の取替材ではない)・・・当初材
3.解体調査 現状垂木の止め釘以外に釘穴はなし
(創建以来垂木の打替えは無い)
4.解体調査
全ての記載番付、方位が90°振れている
全ての部材が当初材
5.解体調査 寛保2年(彦根大火の翌年)の墨書銘有り
庵原家の家臣の墨書名有り
6.発掘調査
下の層より西郷家の紋入り瓦現出
7.発掘調査 西郷家時代の土間叩き仕上げ 現出
8.部材修理
9.部材修理 根継
10.基礎石積替
11.柱脚同寸の箱で自然石の凹凸を写し、柱脚に転写する
12.修理完成後 古色塗り
13.組立 野物(見えない部分)は全て新材に取替え
14.組立
採用に耐えない化粧材(見える部分)も新材に取替え
15.組立 軒先部分 竹小舞下地に上塗り
16.左官工事 カベ中塗り、軒先成形
17.左官 漆喰上塗り
18.土間叩き仕上げ
19.素屋根解体
キーワード
1.文化財の維持
2.古建築の保存
3.伝統建築技術の保存・継承
4.日本文化の継承