寺子屋力石の耐震改修と市民の取り組みが、
第2回 日本耐震グランプリ
内閣総理大臣賞 受賞
木造伝統構法による耐震改修実例とその普及戦略 NPO法人 彦根景観フォーラム
内閣総理大臣賞を受賞した取り組み
■ 防災・耐震・まちづくりフォーラム+木造伝統構法彦根研究会
2005年年度、京都大学の丸谷浩明教授(当時)と防災・耐震の地域アンケートを行いました。 花しょうぶ通り周辺地域の約350世帯に対して、約40%の回答を得ました。
耐震診断は39%が受けたいというのに留まっており、面倒であると言うものもあり、一方、「身近に耐震改修実例があれば」という意見がありました。
滋賀県は新耐震基準をみたしていない1981年以前の建物が10万棟もあります。
実際に県内で耐震改修されたのは、ここ5年間で50棟余りにすぎません。
2006年度、内閣府の事業により、防災・耐震・まちづくりフォーラムを開催し、4回のフォーラム、3回のワークショップを行いました。 フォーラム成果としては、
●彦根市は防災・耐震に対する「地域再生計画」を策定
●滋賀県では防災のポータルサイト開設
●造園協会と滋賀県災害初動時に重機出動の防災協定締結
というものでした。
ワークショップでは、60年代の防災街区ビルのコンクリート柱6本(1階部分)をSRF耐震補強し、実例を市民に見てもらいました。
■木造伝統構法による寺子屋力石の耐震改修
2006年から分科会の木造伝統構法彦根研究会を開催し、彦根には古い木造伝統構法の建物が多い事から、研究会としての活動拠点でもある「寺子屋力石」において木造伝統構法の耐震改修実例を作ることとしました。
江戸時代から寺子屋としての記述があり、約250年前の建物と言われています。現代の寺子屋としても多くの人の集まる場所の安全・安心の確保も必要です。
2007年10月に、棟梁の指導を受け、1ヶ月100人のボランティア(写真参照)により耐震改修工事を行いました。
専門家と市民が一緒に活動し、実例を見ることにより、市民の方々に自分の家の耐震対策をたててもらいたいことと、非常・日常を問わず、心やコミュニティを繋ぐことになると考えました。
滋賀県立大学生・滋賀県立彦根工業
高校生・市民・行政、1ヶ月100人の参加
■木造伝統構法 耐震改修のポイント
木造伝統構法彦根研究会では、鈴木有・金沢工業大学名誉教授の監修のもと、地震に粘り強く耐える伝統民家の特徴を最大限に引き出す耐震改修の方法を、3つの基本方針と5つの指針にまとめました。
その中で、斜材(筋交い)は使ってはいけない事、大事な柱には壁を作る事等を指針としています。
耐震改修前と耐震改修後の内部
歴史的建物を耐震改修することは、命を守ると同時に地域の文化を守ることで、建物を長寿命化することは、環境建築としての重要項目です。日本各地の歴史的街並みを守る為にも成果を公表していきます。
【今後の取り組み】
古民家トラストを立ち上げ、足軽屋敷群の「辻番所」の買取(その後市が買取、文化財として仮耐震補強中)。多賀町にある一円邸(江戸時代)の実測調査ワークショップを開催し、「里の駅」とし、まちづくりと防災・耐震化を同時に進めています。
自宅の耐震改修をという申し出や質問がすでにあります。耐震に対する構造計算の法律的な問題、資金的な問題をクリアできる基準づくりについて、国や地元自治体への働きかけを始めています。 木造伝統構法の構造計算である限界体力計算においては、行政も理解していないことが多く、県、市町村の行政担当者講習会での講師も行ってきましたが、さらに継続します。
一般建築家も、理解なしに耐震改修していることが多いので、問題点を広報し、各地での歴史的建物、景観の保存に役立ててもらいます。
耐震壁とする木格子について、縦横部材寸法の各種組み合わせによる強度実験を繰り返し、部材寸法・仕様をデータ化して公表します。