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彦根まちなか見聞録7  知恵と力と勇気が集まる商店街

それぞれの彦根物語55「花しょうぶ十二将!汗と涙の奮戦記」
 
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中溝雅士さん(花しょうぶ通り商店街振興組合顧問) 



                      リポート by E・H


人と出逢うために生まれてきた 

 4年前、花しょうぶ通りのある店主が検査入院した。ガンが疑われた。朝夕、病院の窓から街を行き交う自動車の列をただ見るほかなかった。迫りつつあるのかもしれない死を前にして、自分は何のために生まれてきたのかと否応なしに考え続けた。そして、ついに結論に達した。
「人と出逢うために」この世に生まれてきたのだと。
 その話を聞いた中溝さんは、スーッと気持ちが楽になった。そうなんだ、「人と出逢う」ために生まれてきたんだ。
 こんな根源的な深い話と、戦国ブームを当て込んで「石田三成「胆の毒」飴(たんのどくあめ)」をつくり売りだすというブラックユーモアな面が両立しているのが中溝さんだ。
 彼は、「清瀧旅館」のオーナーシェフ。大阪で板前修業をし、30歳で彦根に戻り旅館を継いだ。まだ40歳代前半だが、花しょうぶ通り商店街振興組合前理事長で、数々の修羅場をくぐってきたかのようないぶし銀の迫力、押し出しの強さがある。服装も相当に独特で、「板さん」というより「寅さん」を、私は連想してしまうのだ。
 現在は組合顧問となっているが、自らを「ラッキー顧問」という。この「ラッキー」(ツイている)にも深い人生論的な意味があるのだが、割愛する。


元気な商店街の秘密
 花しょうぶ通り商店街は、彦根市で最も弱小な商店街ながら、「ナイトバザール」や“ものづくり市場「アートフェスタ勝負市」“まちのプラットフォーム「LLPひこね街の駅」設立、「寺子屋力石」「戦国丸」の開店、戦国商店街宣言など、独自な発想で自主的・自発的な振興に汗を流す元気な商店街だ。
その元気の秘密はどこにあるのか、爆笑を連発する中溝さんの話から探ってみた。

 第1に、構成員の世代交代が一挙に進み、すべてが若い世代になって、いわゆる長老が若手のチャレンジにストップをかけるということがなかった点がある。ホームページを作るにも、「それで商店街に客が来るのか!」と長老に反対されて実現できないという愚痴をよく聞いたが、そんなこととは無縁だった。

 第2の要素は「出逢い」だ。滋賀県立大学の柴田教授、滋賀大学の山崎教授など現場の活動を大切にする先生や学生達との出逢いが、活動に広がりと幅を与えた。「しまさこにゃん」というマスコットキャラクターも10年前にある店主が好きで作った「嶋左近の会」の一昨年の例会で、嶋左近のファンだという若い女性が、即興で資料の片隅に描いた絵から生まれた。

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百の愚痴より十の提案、十の提案より一の実行

 第3の要素は、「断わらない。やってみよう」という姿勢だ。花しょうぶ商店街のスローガンは、「百の愚痴より十の提案、十の提案より一の実行」である。
 提案と実行を積み重ねてきた結果、当初「フォトコンテスト」だけだった「しょうぶ市」は、クラフト作家が出展するアートフェスタになり、音楽フェスタになり、400年祭では、商店街の人たち、大学生、保育園児、段ボール紙甲冑づくり教室、しまさこにゃん、いしだみつにゃんのキャラクターが共演する「戦国甲冑劇」が加わった。出逢った人にはインターネットでメールを配信し、多くのマスコミ関係者が注目してくれるようになっている。

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 「花しょうぶに相談したら、なんとか実現できる」という評判から持ち込まれる企画もある。彦根レッド計画「ひこね赤祭」もその一つで、赤い自動車150台を集めて彦根城駐車場を埋め尽くした。中溝さんは、およそ不可能と思われたイベントが成功した達成感から赤いボルボを衝動買いしてしまったという。

 400年祭で実現した「佐和山一夜城復活プロジェクト」に続く佐和山再会劇も11月23日に「義の旗の下に「第二章 友よ!」と題して佐和山で実行される。
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出逢いとやり抜く力がチャンスを拡げる 
 醒めた見方をすれば、これらは商店街イベントの枠を超えている。商店街の利益にもならないことに汗と涙を流す「ばかもの」と「わかもの」と「そともの」のイベントである。しかし、そのことがより大きな機会・チャンスを呼び込んでいるとは言えないだろうか。

 コーディネータの山崎教授は、人との出逢いがチャンスとなるためには、心の中にきちんと準備ができていて、心に響くことが大切だという。また、しゃにむに取り組んでやり抜くことが新たな出逢いを呼び込み、企画を呼び寄せ、チャンスをふくらませていくと強調された。花しょうぶ通りの経過を見ているとその通りだと思う。
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熱いネットワークと巻き込みイベント
 他の商店街との違いとしては、カリスマ的リーダーがいないことだ。中溝さんは、自分のことを「ネジのとれた人間」という。「とにかくやる」という馬力はあるが、調整やブレーキをかけることは苦手なようだ。しかし、「しっかりした人間」「学習塾を夜遅くまで手弁当でやる純な人間」「税金に詳しい人間」などいろいろなタイプの店主「十二将」が、さっと協力してくれる熱いネットワークがある。

 さらに、他の商店街はお客様を集めることに力点をおいて「おもてなし型」イベントになっているが、花しょうぶの場合は、お客様も仲間として一緒にやろうという「巻き込み型」で、一度巻き込まれると、手作りの「汗と涙の人間ドラマ」に感動してしまう。ファンになってしまうのだ。前者を「集客」、後者を「創客」というのだと気づかされた。


ゆるキャラまつり 
 この日は、「ゆるキャラまつりin彦根 キぐルミサミット・2008」の初日で、朝から2万5千人を超える人が「ゆるキャラ」の競演に集まった。花しょうぶ通りにも「いしだみつにゃん」「しまさこにゃん」目当ての人たちがたくさん訪れていた。明日は、この商店街で、ゆるキャラと一緒に大綱引き大会が開かれる。いかにも花しょうぶらしい。
 中溝さんが話している途中にも携帯が鳴り、清瀧旅館に泊まる予定の人が渋滞で彦根インターチェンジから一般道へ入れなくて困っているという連絡が入った。
 こんなことは、400年祭の前には考えられなかった。本当に彦根は変わった。(E・H)
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by machinoeki | 2008-10-28 19:17 | 談話室「それぞれの彦根物語」
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