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彦根まちなか見聞録5 見えてきた彦根の地域観光戦略

彦根物語52「400年祭経済調査から見えてきたもの」      
    滋賀大学経済学部准教授 得田 雅章 
     2008年9月20日
                                           リポート by E.H氏
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 得田先生は、計量経済学が専門。
 アメリカの大手証券会社リーマンブラザースの破綻、大手保険会社AIGの公的管理移行などから、日本の金融危機を思い起こす現在ですが、あの金融危機の時代の貨幣供給量と経済指標の変化の関係の検証に取り組む若手の先生です。
 その先生と滋賀大学の山崎教授が、彦根市の委託をうけて、国宝彦根城築城400年祭の経済効果の調査をされた結果、大変おもしろいことがわかってきました。



経済でも大成功の400年祭
 得田先生の調査は、400年祭の期間である平成19年3月21日から11月25日までの250日間に彦根を訪れた観光客がどれだけお金を使ったか、観光客と観光事業者の1300件のアンケートから把握し、そのお金が市内に波及しどの程度潤ったのか、雇われる人はどの程度増えたのか推計したものです。

 調査の結果、観光客数は243万人、観光消費額は174億円、経済波及効果は338億円、雇用創出効果は2,872人となりました。観光消費が地域経済に及ぼす効果は1.95倍となり、波及効果は彦根市のGDPの5%を占めました。
 これは、平成11年から18年の平均に比べて、観光消費額で85億円、波及効果で166億円の増加と、ほぼ倍増です。彦根市のGDPを3%も引き上げたことになり、経済波及効果では3人世帯で45.3万円の増があった計算になります。
 400年祭は、彦根市の経済にとっても大成功だったのです。

観光による経済効果を高める戦略
 この調査自体が観光マーケティングの重要な資料ですが、さらに得田先生は、これで得られた経済モデルを使って、観光振興のポイントを指摘されました。これがとてもおもしろいので紹介しましょう。

 あなたは、彦根市長です。400年祭後は観光客が大幅に減る可能性があります。それに負けないで、経済効果をさらに50億円増やすにはどうしたら良いでしょうか。
 第一は、日帰りの人に宿泊してもらう(宿泊率増加)ケースです。年間140万人の観光客の1割が宿泊客ですが、これを倍増すると50億円の効果が得られます。
 第二のケースは、現状のまま観光客数を増やすことで、176万人と36万人もの増加が必要です。
 第三のケースは、日帰り客の客単価5,200円を500円上げて、人数を166万人と26万人増にすることです。

 宿泊数を倍増するには、ホテルや旅館などへの先行投資が必要ですし、観光客数を大きく増やすには、交通や飲食、公共施設の整備が必要で長期的に取り組むべきことです。
  これに比べると、客単価を上げることは短期的に取り組めるのです。500円でいいから買ってもらえる、魅力的なお土産や食べ物を創造することがいかに重要かがよくわかります。

 さらに、経済波及効果にとって重要なポイントは、観光にかかる本社比率が47%と低いことです。モデルで原材料の市内調達率をあげても、波及効果は上がりません。本社比率を60%に上げることで50億円の効果が上がるのです。彦根で起業する地元ビジネスを増やすことがいかに地域経済にとって重要かがよくわかる結果です。

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ひこにゃんの経済効果d0087325_13354717.jpg
 彦根の超人気キャラクターとなった「ひこにゃん」。
 期間中のひこにゃんグッズの購入額は16.5億円、乗数が1.50と推定して25億円もの経済効果があったと得田先生は見ています。
 さらに、今年になっても彦根への観光客数が大きく減らないのはひこにゃん効果のおかげとも言われています。 データは、ひこにゃんグッズの購買額が、関東から来た人で最も高く、遠距離からひこにゃん目当てに来る人の多いことを示しています。

 ひこにゃんこそ、キャラクター部門の「地域ブランド」第1号ではないでしょうか。
 そして、しまさこにゃん、いしだみつにゃんの「佐和山主従」もいまや大人気です。さらに「おおたににゃんぶ」、滋賀大学の谷口研究室のマスコット「かもんちゃん」も誕生しました。まるで、東京ディズニーランドのようなキャラクターの充実ぶりです。

浮かび上がった彦根観光の弱点
 宿泊客、日帰り客とも、立ち寄ったスポットがお城だけという人の割合が意外に高く、お城とキャッスルロードの2カ所という人が7割近くあります。宿泊する人でさえこのような状況は観光スポット数が足りないという致命的な弱点を示しています。
 仮に、ひこにゃんブームが去れば、どうなるのでしょうか? 泊まっても行く場所がない・・?。

 私はそうは思いません。
 観光は「あご、あし、まくらが高級であればよい」という時代ではなく、「心の満足」の時代なのです。彦根には行く場所は沢山あるのですが、それにふさわしい価値の発見と観光システムの開発がされていないだけなのです。

 参加者の話題もこの点に集中しました。
 観光資源としての琵琶湖と彦根城がリンクできていない。夢京橋、四番町と花しょうぶ通りを結ぶ回遊路ができたら・・。芹川の「けやきみち」も取り入れられないか。もっと自転車を活用できないかなどなど。
 個人的には馬車が巡回すれば素敵と思うのですが、ウィーンやN.Y.で走っている馬車はコストが高く料金も高い、道路に落ちる糞の始末が大変ということでした。世界中を旅した人たちが集まっているんだなあと妙に感心しました。

霧が晴れる「見える化」
 ともかく、観光に関しては様々な意見があるのですが、数量的な裏付けがありませんでした。これで、かなり霧が晴れました。是非、今年も調査を続けて、400年祭後の彦根経済を「見える化」してください。
 それから、われらが「ひこね街の駅・寺子屋力石」のキャラクター「しまさこにゃん」、「いしだみつにゃん」も、ますます大活躍します。
 もう、彦根のコンテンツ戦略から目が離せません。 (By E.H)
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次回は、10月4日(土)10:30~
「生まれ変わった商店街 -四番町スクエア・新しい街への取り組み」
 四番町スクエア協同組合理事長 中村 繁司さんの奮闘の物語です。

どなたでも参加できます。ルアムのおいしい紅茶やチャイを飲みながら、一緒に楽しみましょう。


【彦根物語52】
 「400年祭経済効果からみえてきたもの」  

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得田 雅章
(滋賀大学経済学部准教授)





集客効果やゆるキャラ“ひこにゃん”のブレーク等、「国宝・彦根城築城400年祭」は近年の彦根観光に大きなインパクトを残しました。
この400年祭にあわせて執り行われた、本格的な観光消費動向並びに経済波及効果調査は彦根市として初の試みでありました。そして、その一翼を担うことができたのは、「研究者として、また彦根市民として微力ながら貢献できた!」という喜びに満ちたものでした。
共同研究者としてご指導いただいた山﨑教授、事務方のこまごまとした手続きを全てお任せした畑中さん、データ提供や調査地点確保に尽力いただいた市の担当者の皆さん、そして調査員として多くの観光客に接してくれたアルバイト学生諸君、これらの方々は私にとってまさに天佑でありました。本調査を通じ、彼らと知り合えたことは、私の研究生活にとっての大きな財産となるでしょう。
今回は私のそうした「彦根物語」を披露させていただきました。図らずも、多くの参加者に興味を持っていただき、たくさんの真摯なご質問を受けることができました。感謝、感謝です。

■「四番町スクエア」アンケート調査会場
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■「彦根城表門」アンケート調査会場
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■「いろは松駐車場」アンケート調査会場
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by machinoeki | 2008-10-01 19:29 | 談話室「それぞれの彦根物語」
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