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彦根まちなか見聞録4 『パン屋のおっちゃんは、熱血アートプロデューサー』

 『それぞれの彦根物語』  
                                          リポートby E.H
 【彦根物語51】平成20 年9 月13 日(土)10:30~12:00
「県内の芸術家さんとの出会い ― 高宮町蝸牛会アート展について」
馬場 貞二 (クラウンブレッド平和堂
) 


アート展を開催することによって県内の芸術家さんの作品を紹介するとともに、高宮町を訪れた人達に町並みを歩いていただき、高宮の風と空気と水を肌で感じていただきたいという思いです。また、テント地に作家さんや園児・学生等に絵や書を描いていただき展示しています。


それぞれの彦根物語 
 9月13日(土)は、「県内の芸術家さんとの出会い 高宮町蝸牛会アート展について」だった。
 いつもどおり10時20分頃に「寺子屋力石」に行くと、入り口前に大きな「ひこにゃん」の立看板が出され、そのまわりに人があふれていた。通りの反対側の軒先にも6人ほどの人が立って熱心に話している。
 中に入ると、また「ひこにゃん」看板、壁面には大きなテント絵と「若鮎」と書いた大墨書。混雑しているため立ち止まっていると、すぐに威勢のよい声がとんできて、「スタッフさん、名簿に記入してもらって!」。女性スタッフに促されて住所、氏名を記入した。次回のアート展の案内を送っていただけるという。
 「アートだから」とスマートなイメージを持っていたのがみごとに裏切られた。この演出、顧客管理はイベント・プロデューサーのものだ。


d0087325_1446314.jpg11年続く町の手作りアート展
 馬場貞二さんは、彦根市高宮町の「クラウンブレッド平和堂」の店主。400年祭では、「ひこにゃん」を手書きした特大パンを販売して話題を呼んだが、その普通の「パン屋のおっちゃん」が、実は、高宮町全体を巻き込んだ現代アート展「蝸牛会アート展」のプロデューサーだったのだ。

 高宮町蝸牛会の活動が始まったのは平成9年度の福山聖子風景画展から。蝸牛とは「かたつむり」のことで、現代アートとは不釣り合いな感じがするが、由来は不明だ。

 事の発端は、細密な線で古民家を描く福島さんが、古い蔵の残る宿場町の高宮町でスケッチをしては、馬場さんの店でパンを少しづつ買って帰ったことから。「パンがおいしい」と福島さんからほめられた馬場さんは、たちまち彼女の大ファンになり、彼女の絵画展をお寺で開催する。会場で来場者にパンを無料で配ったら150個のパンがたちまちなくなった。

 「高宮町の人たちはこれほど芸術に飢えているのか」と感じた馬場さんは、平成11年に再び福島さんの絵画展、蓮渓円誠のからくり玩具展、渋谷章の獅子舞写真展を開催する。以後、絵画、書、陶芸、藍染、生け花、ガラス工芸、タペストリー、絹衣、木工、三線、よし笛、テント壁画とジャンルを変えつつ、毎年開催し、平成20年度で11回を迎えた。

遠いアート、近いアート 
 会場は、高宮地域文化センター、徳性禅寺、高宮小学校と広がって、大きなテントに絵画や墨書を描いたテント展は全長170m。著名な作家だけでなく、小中高校の美術部、幼稚園や保育園、市民グループ、個人や家族が、43枚を描いた。
 さらに、力石で上映されたDVDでは、ライブイベントとして岩村哲士が実際に絵を描く姿が映し出された。生命をつなぐ「いきもの」の力があふれる絵と、それを描く作家の創作の力あふれる姿を高校生と思われる人たちが大勢で、間近に、熱心に見ていた。

 いわゆる美術館で開かれる美術展ではあり得ない特徴である。前者を「遠いアート」と呼ぶなら、これは「近いアート」だ。地域の人々が自ら主催し、暮らしの中で生きる楽しみを見いだし、暮らしを楽しむ、普通の人が普通に参加し、楽しむことのできるアートだ。
 こんな力強い手作りアート展をプロデュースする馬場さんとスタッフはどんな人たちなんだろう? 俄然、興味がわいた。
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すごいパン屋のおっちゃん、おばちゃん 
 これだけのアート展を毎年開くと資金が心配になる。
 いくら手作りとはいえ、チラシの印刷やテント地などの材料だけで50万円、全体では100万円ぐらいかかるそうだ。入場無料だから寄付集めも大変で、地域の商店や大手企業の工場に協賛してもらう。さらに、安い報酬しか払えないため作家の招聘も大変で、馬場さんは商売そっちのけで、何度も足を運んでいるらしい。

 まわりの人によると、馬場さんは「熱意と思いこみ」の人で、自分たちは必ずできると信じて私利私欲を超えて行動する。その人柄と行動力が多くの人に感動を与え、活動に巻き込まれていくという。馬場さんのような「アホの旗振り」がいなければ何も変わらないと参加者の一人は表現された。「アホ」とは、「自分の得にならないのに」という意味だ。

 馬場さん自身も「迷ったときは、損得よりも善悪を考える」ことを信念にしていると述べられたが、力石に来た人たちは、一様に「奥さんが偉い」という。後で判ったが、奥さんもスタッフの1人として力石に来ておられた。その奥さんを前にして、みんなが「支える奥さんが偉い」というのだから、よほどすごいのだろう。

スタッフも市民作家もすごい 
 ところが、すごい人はこれだけではなかった。
 元教員で80歳近い方が企業の相談役としてアート展を支えていたり、地域の企業を定年退職後ビデオ映像づくりに取り組んでNHKの全国ビデオ映像大賞に応募し3位に入った人がアート展の記録を担当したりと、多士済々。

 そんな人たちが9時前に力石に来て、10時半からの準備をしていたのだ。「ひこにゃんパン」も用意されていた。みんなで切り分けていただいたが、なつかしいカステラパンで、柔らかい生地にクリームがおいしい。注文すれば作ってもらえるそうだ。
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アートによるまちづくり 
 最後に、コーディネーターの山崎滋賀大学教授が、アートによるまちづくりを紹介された。一昔前まで「まちづくり」は、建築や都市計画などの土木建設分野が主役だったが、近年は、文化や芸術、教育などが「まちづくり」の主役になっている。
 アートは人を活性化し、創造によって地域を再生する力を持っている。「創造都市」には多くの人が集まる。世界的に有名な例は、スペインのビルバオで、鉄鋼業の衰退でさびれた都市を再生するため、芸術家を町に住まわせて作品を発表させる「アーティスト・イン・レジデンス」が進められた。アートのもつ可能性は大きい。是非、アーティストが住む町にしようと締めくくられた。
                                            (By E.H)
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それぞれの彦根物語52
 来週、9月20日(土)は、滋賀大学経済学部 得田雅章准教授の登場です。
 「400年祭経済調査からみえてきたもの」  
400年祭で彦根は大きく変わりました。市民に自信が生まれたように思います。
では、経済調査では何が見えてきたのでしょうか。得田先生、期待しています。
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by machinoeki | 2008-09-15 22:45 | 談話室「それぞれの彦根物語」
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