LLP(有限責任事業組合)ひこね街の駅 武櫓倶

彦根まちなか見聞録2  危機遺産とデジタル・アーカイブ

それぞれの彦根物語 49  2008年7月12日(土)
 「写真で見る彦根の今と昔」 (渋谷博、久保田昌弥、金子孝吉) を聞いて
                        彦根景観フォーラム理事 E.H氏 リポート

d0087325_23552855.jpg渋谷さん(写真左)は、渋谷写真館を経営され数千点の写真を保有されている。久保田さん(写真右)は、渋谷さんと同じく彦根史談会の会員で郷土史家である。久保田さんの父親(故人)が、彦根市地歴グループとともに丹念に彦根の歴史遺産を踏査し写真におさめた「ひこねの歴史を歩く」という冊子が平成19年10月に復刻された。この冊子に収録された昭和53年から59年までの写真と渋谷さんの写真、さらに戦前の滋賀大学の卒業アルバムなどからも写真を引用して、滋賀大学の金子教授が選択・編集し、今回発表されたものである。

写真は歴史の証人
 今は痕跡を残すのみの長曽根浜の汽船桟橋は、相当な沖合いまで木製の桟橋が作られており、汽船は喫水の関係で彦根旧港湾には入れなかったと推定される。昭和30年代には、松原の回転橋を通って大型汽船が旧港湾まで入っており、浚渫があったことを物語る証拠である。
 また、中島町のタカバシ(高橋)は、橋の両袖の土を高く盛り上げた橋で、その下を琵琶湖から入ってきた丸子船(運搬船)が通り、現在の滋賀大学の裏門近くに残る蔵に荷揚げしたという。 丸小船は帆船で舵を固定する木組みが高く、普通の橋では通れない。さらに、古地図には丸小船が転回した広い水面があるという。江戸時代には重い荷物を運ぶ丸小船は喫水が深く松原で荷をおろし、小船に積み替えて城下町に運んだという記述があるが、その例外を示しているようだ。このあたりには、彦根藩の船蔵や天皇を乗せる御座船もあったということで、歴史の解明にヒントを与えてくれる写真である。
 このほか、池洲橋の曲げられた街路をバスがかろうじて通る写真や、罪人・行路病人などを収容した長曽根小屋跡の写真など、近世城下町の構造を解明できる貴重な写真が紹介された。

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長純寺の崩壊

 衝撃的だったのは、長純寺の崩壊の写真だ。長純寺は、市街地の中央部にあり、市役所に近い。松尾芭蕉の弟子として名高い森川許六の墓があり、井伊直正の姉・高瀬姫の五輪塔のある由緒のある寺だが、現在は老朽化した庫裏と墓地を残して大きな空き地になっている。写真は 1997.9.12に撮影されたが、浄土真宗寺院独特の大屋根の中央に穴があき瓦ごと陥没、さらに大屋根左袖の棟瓦が崩れ落ちている。多くの檀家に支えられている寺院でも、崩壊することがあるのだ。
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 このほかにも、多くの失われた遺産があった。中村不能斉旧邸、池州橋の木俣長介下屋敷、中堀に沿った和光会館と堀沿いの景観、池田屋敷、鈴木屋敷、芹川にかかる木製の後三条橋(とその上を行く独特の葬列)、さらには、多賀山間地の廃村、磨針峠の望湖堂などだ。
 

危機遺産とデジタル・アーカイブ  
 危機遺産とは、まさに崩壊の危機に瀕している遺産だ。芹橋の辻番所・足軽屋敷は、買い取り運動によって初めて分かったのだが、屋根を支える柱も梁もシロアリ被害が大きく崩壊寸前だった。このほか、一般に古民家と呼ばれる足軽屋敷、町家、農家が放置され、多数が崩壊の危機に瀕している。放棄され、手入れがされないと建物は崩壊する。こうした古民家の文化財的な評価は、城郭や大きな武家屋敷と比較して低く、行政の保護施策を期待するのはむずかしい。残すには、市民が活用するしかないのが現状だ。それでも、彦根は多くの危機遺産が残されていて、まだ幸せといえる。。大津ではこの一年でほとんど除却されマンションに変わってしまった。

 しかし、すべてを残すことは不可能だ。その意味では、古い写真も新しい写真も大量に集めて、デジタル・アーカイブとして統合的に残しておきたい。「年輪を積み重ねる街」にこそ、デジタル・アーカイブは必要だ。景観フォーラムでは、その準備にかかっている。
写真は写されている内容と同じくらい、いつ、どこで撮ったかが重要で、それは撮影者にしかわからない。その情報が失われると写真の価値は半減する。逆にそれがわかれば、たくさんの写真を集めることで、全体のまちなみが復元できる。特に彦根のように城下町の構成自体に高い価値がある場合、デジタルアーカイブは世界遺産にとっても貴重な武器、タイムマシンとなる。できるだけ沢山の写真をあつめること、撮影場所と年月日を記録することに、ぜひ皆さんの力を貸していただきたい。
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それぞれの彦根物語 次回は9月から・・・。 

【彦根物語50】 平成20年9月6日(土)
「井伊直弼・大老料理の再現」 小島盛義氏(滋賀大学彦根地区生協店長)
【彦根物語51】 平成20年9月13日(土)
「県内の芸術家さんとの出会い―高宮町蝸牛会アート展について」 馬場貞二氏(クラウンブレッド平和堂)
【彦根物語52】 平成20年9月20日(土)
「400年祭経済調査からみえてきたもの」 得田雅章氏(滋賀大学経済学部准教授)
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by machinoeki | 2008-07-27 09:21 | 談話室「それぞれの彦根物語」
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