「ほっ」と。キャンペーン

LLP(有限責任事業組合)ひこね街の駅 武櫓倶

それぞれの彦根物語「彦根リキシャにかける夢」

彦根リキシャにかける夢
                 彦根リキシャ開発プロジェクト委員 竹内洋行  2009/02/14
                                          リポート by E・H

 「彦根の町に似合う、彦根で作る、彦根で走る」をコンセプトに開発された自転車タクシー「彦根リキシャ」が、いよいよ3月1日から営業運行を開始する。
 「彦根リキシャ」には、開発プロジェクト委員の竹内洋行さんの夢と人生の出会いがいっぱい詰まっている。
それだけではない。実際にリキシャに乗ってみると自然に笑顔になり、町を歩く人に手を振りたくなる。今回の彦根物語では、そんな未来の可能性を感じることができた。

竹内さんの生き方
d0087325_15141975.jpg 竹内さんは、花しょうぶ商店街の中ほどにある小さな店「エコスタイル自転車店」の店主だ。寺子屋力石にも、戦国丸にも近い。
 彼は、元々自動車のシートベルト関連部品を製造する会社に勤めていた。ものづくりが好きで、部品の開発にも参加し、毎日が楽しかったという。ところが、安定した収入があり働き甲斐もある会社を辞めて、小さなリサイクル自転車店をはじめた。
 「一体、なぜなんだろう」とずっと疑問だったので、思い切って聞いてみた。
 「子どもに、お父さんの仕事はなに?と聞かれたら、自信をもって答えられないでしょう。子どもに自信をもって語れる。それが私の生きる基準です。」
 一瞬、何のことか解からなかった。
 彼は、自動車は環境に良くない。環境に悪いことをしていては子どもに胸をはれないと言っていたのだ。おどろき、そして彼らしいと思った。彼は、寺子屋力石で週1回、滋賀大学の学生達と一緒に、家に帰ってもテレビゲームをするしかない小学生たちを集めて、みんなで遊んだり宿題をしたりしているのだ。
d0087325_15153273.jpg


自転車の世界へ 
 「人力」で「ヒト」も「荷物」も運ぶ。「クルマ」では当たり前の世界を、自転車で「簡単に」「あたりまえに」実現したい。竹内さんは2003年から毎年のように試作に挑戦した。d0087325_1521789.jpg
 試作1号は、2台の中古自転車のフレームを横につなぎ椅子を取り付け、後ろ向きに2人を乗せるものだった。その後、低重心オープンタイプ、シンプル椅子型、幅800mmの箱型、幅狭子ども用、鉄枠板張り部屋型と2007年までに5台の試作車を作る。
 この間、彦根城築城400年祭の市民プロジェクトとして江戸時代の彦根藩士が発明した世界最古の自転車「陸舟奔車」の再現にも参加、多くの仲間達に出会った。


彦根リキシャへの道
  「陸舟奔車」の製作過程で出会った料亭経営者やボランティアの主婦、OL、デザイナーとその卵、地場産業である彦根仏壇の職人、漆芸家、蒔絵師、滋賀県立大学のプロダクトデザイン研究室の印南先生と学生達、高校の美術教師、プロのおもしろ自転車製作者やオリジナル原付製作者たちが集まって、2008年3月、「彦根リキシャ開発プロジェクト」がスタートする。d0087325_152241.jpg

 彦根では、すでにベロタクシーが導入され、竹内さんもドライバーとして活躍していたが、ドイツ製で部品の供給に課題があった。また、卵形の斬新なデザインも彦根の町の風景には似合わないと感じられた。「彦根の町に似合う、彦根で作る、彦根で走る」が開発コンセプトになった。
 特に県立大学の研究室の参加により、デザインコンセプトが徹底的に詰められた。彦根をイメージする言葉を大量に集め、マトリックスで整理してデザイン要素に展開していく手法が竹内さんには新鮮だった。その成果はコンセプト・カーに結晶するが、大きすぎて宴会ができたほどだった。

 ここから、設計、製作(鉄と大工と伝統工芸)、調整と時間がかかり、11月の環境ビジネスメッセのお披露目の当日朝まで徹夜で製作が続いた。
 こうして、総重量150kg、全長3.8m、高さ2mの彦根リキシャが完成し、各地のイベントに出展。秋篠宮殿下もお乗りになったという。直接制作費は約150万円だった。

彦根リキシャのディテール  
 実際にリキシャに乗せてもらった。d0087325_15242469.jpg
 銅版で葺いた唐破風の屋根と頑丈なケヤキの柱、釘を使わない伝統建築の木組みに、「ふきうるし」の漆塗りと蒔絵の彦根仏壇の技法を施した「重厚さ」。座面の畳地や編み天井は茶室の「簡素さ」。ドライバーの法被(はっぴ)や車体に蒔絵で描かれたリキシャの炎のエンブレムは「遊び心」。楽しい発見がいくつもある。

 重い車体の安定した乗り心地は極めて上質だ。
そのうえ、意外にも軽快に走る。走り出すと、路面から町なみ、大空までが視野の中で動き出し、全身にそよ風を感じ爽快な気分になる。思わず笑顔になり、歩いている人に手を振ってしまう。

 走ってくる姿は牛車に似ていてどこか祭を連想させる。走り去る後姿も、なかなか素敵だ。漆塗りの車体の深く渋い色と古い街なみの暗い色が溶け合って、毛氈の緋色が際立つ。
d0087325_15262714.jpg
d0087325_15265673.jpg


リキシャの可能性
 「彦根リキシャ」は最高級のフラグシップモデルだ。豪華で楽しい。速く走るのではなく楽しく走る。「クルマ」で歩行者に手を振る人はもはやいないが、リキシャなら歩く人と心が通い合う。ぜひとも観光で成功してほしい。

 竹内さんの夢は、さらに広がる。より軽快で使い勝手の良い安価な普及型を製作し、みんなに使ってもらいたい。人も荷物も運べる「あたりまえの足」にしたいのだ。d0087325_15311969.jpg
 もし、普及版リキシャが完成したら、観光とあわせて会員制のコミュニティ・タクシーができないだろうか。彦根の狭い路地は軽自動車がぎりぎり直進できる幅しかなく、足の悪い高齢者の通院や大きな荷物の搬送に不便が生じている。高齢化の進展でクルマを運転したくない人も増えてくる。リキシャなら、人にも環境にもやさしい。だれでも運転できそうだ。

 「クルマ」の問題は私たちにとって最も悩ましいものだが、「歩く」と「クルマ」の間に「リキシャ」が入ると暮らしも社会も大きく変わる予感がする。環境にやさしい、持続可能な社会の具体的な姿が見えてくる。

新しいベンチャー 
 私の目には竹内さんはベンチャー、それも社会起業家に見える。また、彦根リキシャの開発プロジェクトは、新しい地域ビジネスが生まれる過程を示唆してくれている。だが、ビジネスとしては入り口に立った段階だ。成功するかどうかは、これからにかかっている。

 彦根リキシャは、3月1日10時から滋賀大学彦根キャンパスで行われる「開国フェスタ」で出発式をした後、花しょうぶ通りにある戦国丸で結婚式を挙げる新郎・新婦を彦根城から戦国丸まで送迎する。華やかなデビュー・パレードだ。私も沿道で若い二人と竹内さんとリキシャの未来にエールを送りたい。  (By E.H)

※リキシャでのパレードは運行許可が間に合わず出来なくなりました。
 戦國丸前での写真撮影のみとなりました。悪しからずご了承下さい

[PR]
by machinoeki | 2009-02-23 17:52 | 談話室「それぞれの彦根物語」
<< 「義の三将にゃん前結婚式」を挙... 第2回&第3回歴史・景観・まち... >>